杉並区 税理士を掲載
一○○一年第一四半期○・三%増とほぼゼロ成長、第一四半期にはマイナス一・三%に落ち込んだ。
この間、EU経済も実質ゼロ成長だった。
米株価の続落はEUから直接、間接の両面での対米投資の形で向かっていたマネーの流れを逆流させ、その余波が各地に及ぶ形で、グローバルマネー全体の変調を起こしていた。
N銀執行部はリフレ政策とは距離をとった。
だが、政府が財政改革を柱として構造改革の推進路線を明確にしたことで、デフレ脱却の政策手段として財政政策(減税、追加財政支出)を使えないのは明白。
となると、金融政策に再び注目が集まってくる。
二○○一年八月十三、十四の両日開いた政策委の決定会合での政府代表(内閣府)はこう語っている。
「政治的な議論の中では、金融政策を魔法の杖のように考える意見も少なくない。
決定会合の場の議論と大きなギャップがある。
金融政策は高度に専門性があり、それ故にN銀の独立性・専門性を重視した政策決定メカニズムが必要とされている訳であるが、(そういう)政治的風土との対話ということも、N銀の説明責任確保の上で重要な課題である」内閣府の出席者は十三日が政策統括官のI一政(後の副総裁)、十四日が経済財政担当相の竹中平蔵。
この時の発言は竹中のものとみられる。
発言の主は、「一層の量的緩和に向けて毅然たる態度で臨んで頂きたい」と結んでいる。
財務省の出席者(総括審議官の藤井秀人)も、「長期国債買い入れ増額や時間軸の強化等を含め、経済により効果のある政策を幅広く検討頂きたい」と付け加えた。
「政治的風土」を踏まえた政府の主張に押されたのか、政策委は同会合で当座預金残高目標を一兆円引き上げて六兆円にし、国債買い切りオペ額も月四千億円から六千億円に増やすことを決めた。
ただ、それは必要とされる「思い切った措置」にはほど遠く、従来からの「小出し方式」の域を出なかった。
N伸は、当座預金一兆円の上積みでは不十分だとして、二兆円上積みの七兆円を提案、時間軸政策についても二○○三年一三月の消費者物価指数伸び率をゼロ%以上とする目標期限の設定を提起した。
同案は一対八で否決、N伸も議長案に反対票を投じたことで、三月以来の全員一致路線はここで幕を日経平均株価は七月に再び一万二千円を割った。
八月の量的緩和策拡大の政策効果は一瞬で薄れ、一日しか持たなかった。
八月二十九日には米株価の下落を受けて一万一千円台も割り込んだ。
一万円割れも時間の問題となった時に、世界は運命の日を迎える。
二○○一年九月十一日。
突然の米同時テロ事件で、世界の金融・資本市場はマヒ状態に陥る。
事件から一夜明けた十一日の東京市場の日経平均は一気に一万円割れとなり、九千六百円台に下落した。
一九八四年八月以来の水準だ。
東証はサーキットブレーカー(相場急落時の取引停止措置)を発動、結局、終値は九千六百十円十銭。
時価総額も三百兆円を割り、バブル全盛期から半分の規模に縮小した。
十二日未明、N銀は市場が開く前に、副総裁のFを本部長とする「危機対策本部」を設けた。
各政策委員には待機を要請するとともに、金融市場の安定策として、金融市場方針に盛り込んだ「なお書き」規定(資金需要が急激に増大するなどの金融市場が不安定化する恐れがある場合は、一層潤沢な資金供給を行う)を活用することの了承を取り付けた。
N銀は、午前九時に市場が開いた三分後に一兆円、十時過ぎにまた一兆円と、相次いで大規模な手形買い入れでの資金供給に踏み切った。
無担保コールレート翌日物は、市場が開いた直後は前日の○・○○三%(加重平均金利)から一時、○・○七%に上昇したが、この思い切ったN銀オペの効果で最終的には○・○一%にとどまった。
翌日も、N銀は市場に供給した二兆円規模の緊急資金をそのまま維持した。
六兆円目標が八兆円規模と膨らんだわけだ。
ただ、翌々日の十四日、N銀は一部資金の吸収に動く。
市場の緊急性が払拭されたわけではないが、八兆円が定着することを恐れたかのようでもあった。
この時の緊急量的緩和の経験から、何らかの理由で流動性危機が懸念される時には、思い切った量的な資金供給は市場安定の効果を上げることがわかった。
テロ対策だけでなく、デフレに対しても実はそうした思い切った量的目標の引き上げが効果を発揮すると判断していれば、その後の政策対応も現実とは異なったかもしれない。
この間、同月十四日、経営不安が伝えられていた大手スーパーのMが持ちこたえられず、子会社六社とともに東京地裁に民事再生法の適用を申請した。
市場の不安定性が増す中で、関心は九月十八日の政策委会合に注がれた。
ることにした。
市場の資金需要をあくまでも緊急時の特殊需要と位置づけ、さらなる量的拡大を遠ざけた背景には、会合では、大半の委員が、景気の現状及び先行きとも、輸出の落ち込みを中心にした調整の厳しさが増し、テロ事件が先行きの不透明さを高めているとの見方で一致した。
問題はこの後だった。
市場では、追加の二兆円を含めた八兆円供給が定着していた。
政策委も市場実勢を無視はできない。
だが、多くの委員は、@金融市場での流動性需要が今後、どの程度高まるかは見極め難いA市場が安定すると流動性需要が減退し、高水準の資金供給が継続できなくなる可能性もある、との意見だったという。
そこで、八兆円供給の現状をそのまま認めるのではなく、これまでの「六兆円程度」から、「六兆円以上」とすることで、資金需要の変動に応じて弾力的に資金供給できる目標に代えることとした。
もう一つはロンバート貸出制度の修正。
同制度の基準金利化している公定歩合を○・一五%下げて○・一○%にしたうえ、公定歩合金利が適用される期間を、それまでの最大営業日数五日から、十日に延長す先のH、Yら執行部の「量的緩和はジャブジャブでもう効かない」との判断にとらわれたように思われる。
際限のない追加策に追い込まれかねないという強迫観念に縛られ、量的目標の拡大を少しでも先送りし、ロンバート貸出制度の修正でお茶を濁した。
同制度は前章で見たように、取引先の追加借り入れ需要を受けて金融機関がN銀に申し込む仕組み。
明らかに景気対策だ。
しかし利用実態はあまりなかった。
量的緩和策を流動性対策に限定する一方、利用効果にすでに疑問符がついているロンバート制度の手直しで名ばかりの追加景気策を講じるやり方は、政府の総合経済対策の常套手段である政策項目の数を積み上げるメニュー方式と同じだった。
これには、さすがに複数の委員が、疑問を投げかけている。
九月十八日の議事要旨を読むと、ロンバート制度の手直しに政策委で疑問が投げかけられたことに対して、執行部とみられる委員は、「流動性対策を通じて市場を安定化させることは、これまでの金融緩和措置の効果浸透を促す形で緩和効果を持つ」と述べている。
ならば、ロンバートの手直しよりも量的緩和策を拡大したほうが、より大きな効果が得られるのではないか。
思い切った策を後回しにするN銀の習性がここでも顔を出していた。
執行部案に対して、N伸は当座預金残高の目標を市場実勢通りの八兆円とするとともに、国債買い切りオペ額を月六千億円から同八千億円に引き上げる案を一人、提示した。
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